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インフレは国民を幸せにする / 「2%未達でもデフレ脱却判断」は円高・財政悪化になるのでやめた方が良い

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政府はインフレ率の見通しを下方修正し、2%に達する時期を2021年度に(何度目になるかわかりませんが)先送りしました。

政府や日銀が目安としているのは俗にいうコアCPI(消費者物価指数 生鮮食品を除く)で現在は0.9%まで上昇しています。

2%にはまだ遠いですが、過去の日本の水準から考えた場合、かなり良い水準まで上昇してきています。

コアCPIの推移はこちらを参照してください

インフレ目標には達していませんが、景況感が良好なことや株式市場が上昇していることもあり、「2%に達していなくてもデフレ脱却と判断すべきではないか」という声が日々高まっているようです。

感覚的には、デフレ脱却宣言をした方が気分的にも景気が良くなったように感じて良いのかもしれませんがマクロ経済分析の観点からは絶対にやってはいけないと思います。

その理由は円高防止と財政再建です。

インフレにはとんでもない力があります。

適度なインフレは国民を幸せにしてくれます。

こちらではポイントのみ説明します。

1つ目の円高防止については、米国や欧州など多くの先進国でインフレ目標を2%としています。

実際、多くの先進国では長期的にみると平均して2%前後のインフレ率となっています。

このような状況でこれまで通り日本だけがデフレとなると円(JPY)の購買力平価が他の通貨に対してどんどん円高方向にシフトしてしまいます。

購買力平価は長期的な為替レートのトレンドに影響を与えることになります。

よって、長期的な円高トレンドをストップさせるためにもインフレ目標は他国に合わせて2%とする必要があります。

さらにインフレ率が上昇すると実質金利が低下します。

実質金利とは「名目金利一インフレ率」です。

日本の例で説明すると名目金利はここ数年0%前後です。

例えばデフレでインフレ率が-0.5%の時の実質金利は「0%-(-0.5%) =+0.5%」となります。

デフレの分、実質的にはプラスになるということです。

これが現在のインフレ率+0.9%で計算すると、実質金利は「0%-0.9%= -0.9%」となります。

名目金利が共に0%でもインフレ率によって実質金利が上下します。

グローバル金融市場でマネーは金利の低いところから高いところにシフトするとよく言われますが、これは名目金利ではなく実質金利で考えた方が正確です。

デフレで実質金利が+0.5%の時と、現在のように-0.9%のときではかなり違ってきます。

現在はインフレ率が上昇したおかげもあり、日本の実質金利もかなり低下してきています。

これが円高防止に作用しています。

ちなみに2011年~2012年頃の1ドル=80円前後の円高時は日本はデフレで実質金利がプラス、米国やユーロ圈は実質金利が大幅なマイナスで円高が進みました。

実質金利は短中期の為替のトレンドに影響を与えると言われます。

このようにインフレ率が上昇することで長期、短中期の円高を防止できます。

円高になると企業業績の悪化や株価の下落、更なるデフレと過去20年以上日本が苦しんできた状況の再現となる可能性があります。

2つ目の財政再建はシンプルにインフレによる実質債務の減少です。

プライマリーバランスが将来的にプラスとなっても利払い負担も重く、1000兆円以上の借金を減らしていくことは困難です。

しかし、仮に2%のインフレが10年続けば、単純計算で実質的に借金が20%近く減少することになります。

もちろん国債の利回りも上昇し、後追いで利払いも増えますが、それでもインフレの効果は絶大です。

このようにインフレは円高防止と財政再建という形で国民を幸せにしてくれます。

よって、雰囲気でデフレ脱却宣言をするのではなく政府・日銀にはもう少し頑張ってほしいと思います。

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