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個人向け国債のキャッシュバックが減少/発行事務取扱手数料が減少

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個人向け国債は隠れた人気商品です。

マーケット金利がマイナス金利になっても最低0.05%は保証されており、解約時は過去1年分の利金を変換すれば額面100で買い取ってもらえるので、1年以上保有すれば元本割れがないことになります。

そして最も大きなポイントは多くの金融機関で実施しているキャッシュバックキャンペーンです。

金融機関が個人向け国債を販売すると下記の発行事務取扱手数料が得られます。

  • 固定3年:額面100円あたり40銭(0.4%)
  • 固定5年:額面100円あたり50銭(0.5%)
  • 変動10年:額面100円あたり50銭(0.5%)

多くの金融機関は預かり資産拡大を目指し、この手数料を原資にして、投資家にキャッシュバックを行っていました。

中には財務省から得られる手数料を全てキャッシュバックする金融機関もあり、個人向け国債は隠れた高利回り商品となっていました。

上記の通り、1年保有して解約した場合はクーポンは変換する必要がありますが、キャッシュバック分はそのまま残ることになりますので、0.5%の利回りとなります。

銀行で定期預金をしても0.1%未満の現状では、リスクがないにもかかわらず高利回りの夢のような商品でした。

しかし、2017年4月分からは下記の通り発行事務取扱手数料が低下します。

  • 固定3年:額面100円あたり20銭(0.2%)
  • 固定5年:額面100円あたり30銭(0.3%)
  • 変動10年:額面100円あたり40銭(0.4%)

これに伴い金融機関のキャッシュバックの率も低下する予定です。

ただし、最も魅力的と思われる「変動10年」は0.4%と比較的高利回りなので実質的な影響は少ないかもしれません。

念のため説明しておくと、0.4%のキャッシュバックは総合課税になります。

所得が高い方は最高55%の所得税が課されるので、手取りは0.18%となります。

それでも他の金融商品で元本リスクがなく0.18%の利回りを出せる商品はありません。

そのため、キャッシュバック率の低下後も個人向け国債は最強の安定運用商品です。

ただし、金融機関の立場で考えると、手数料をそのままキャッシュバックに使うので収益にはなりません。事務コスト分だけ赤字になります。

また、営業担当者もこのような商品ばかりやっていると成長しません。

証券会社は償還資金を投信や外債などに持っていきたいのでしょうが、現実はそこまで期待できないでしょう。

下記リンク先にも掲載していますが、あまりやりすぎるのも弊害が大きいような気がします。

個人向け国債キャッシュバックキャンペーンはそろそろやめた方が良いのでは?

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最後に、個人向け国債のキャッシュバックは証券会社が財務省から受け取る手数料を投資家にプレゼントする仕組みです。

そもそも、クーポンが0.05%に対して手数料が0.4%(変動10年)というは高すぎます。

また、見方を替えれば、税金を使って実質的な利回りを高めることで、個人に国債を引き受けてもらっているとも言えます。

マーケット原理を歪める形となっており、本質的には良くない状況であるため、キャッシュバックキャンペーンは少しずつでも減らしていくべきです。

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