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予想インフレ率(期待インフレ率:ブレーク・イーブン・インフレ率)と物価連動国債

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こちらのページでは予想インフレ率(期待インフレ率:ブレーク・イーブン・インフレ率)と物価連動国債について掲載しています。

この分野は難しい部分も多いですが、理解を深める際のお役に立てれば幸いです。

まず最初に日経新聞の関連記事をご覧ください。

2017/7/26日経新聞記事

予想インフレ率低下9ヵ月ぶり水準原油安観測根強く

金融市場で、物価の上昇見通しが一段と鈍くなっている。予想インフレ率を示す指標は25日、9カ月ぶりの低い水準となった。原油相場に上昇の勢いはなく、国内物価が上がらない環境が長引くとの見方が強まっているのが一因だ。日銀が20日の金融政策決定会合で2%の物価安定目標を先延ばししたのも市場参加者の物価見通しを下振れさせたとの見方もある。

予想インフレ率を示す「ブレーク・イーブン・インフレ率」(BEI)は25日に0.394%と、2016年10月7日以来の低い水準となった。16年11月のトランプ米大統領誕生で上昇した分は、帳消しになった。

BEIは10年物の国債と物価連動国債の利回りの差で算出する。10年物国債の利回りは日銀がゼロ%程度に誘導する方針で、利回りの動きは非常に小さい。そのため、足元は物価に応じて元本額が変わる物価連動国債の動きがBEIに作用する。物価上昇見通しが鈍って物価連動国債の売りが強まれば(利回りは上昇)、BEIは低下する。

低下の背景について、バークレイズ証券の押久保直也氏は「最大の要因は原油安にある」とみる。主要産油国は24日に協調減産の追加策を決めたが米シェールオイルの開発もあって中長期の原油安見通しは根強く、市場参加者の物価見通しは改めて低下方向に傾いた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美氏は「日銀の物価見通しが下がった影響が表れた可能性がある」と指摘する。日銀は20日、2%の物価目標の達成時期を従来の「18年度ごろ」から「19年度ごろ」に1年延期。同時に、17年度と18年度の物価見通しも下方修正した。

一方、日銀が全国の個人4000人を対象にした調査の6月版では、1年後に物価が上がると答えた割合が75.4%と前回3月調査から8ポイント強増加。5年後に上がるとみる回答も増えた。金融市場と個人などの物価見通しの違いについて、バークレイズ証券の押久保氏は「(生鮮品など)身近なものの物価が上がり値上がりの実感がある」と指摘したうえで、市場は原油安などから中長期で物価が上がらないと「冷静にみている」とみる。

物価上昇率が鈍いのは世界的な傾向で、日本はなおのこと上昇しづらいと連想が働いているとの見方もある。8月の物価連動国債の入札でBEIは持ち直すとの指摘もあるが、市場ではBEIが大きく上昇する見通しが一段と乏しくなっている。

ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)と物価連動国債

上記の記事にあるように、物価連動国債と10年利付国債から算出されるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は約0.4%程度となっており、市場が考える期待インフレ率は低い水準となっています。

ちなみにブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)の計算式は下記の通りです。

  • ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)=10年国債利回り-10年物価連動国債利回り
  • 【2017/7/26時点】0.406=0.08-(-0.326)  

ここにあるように物価連動国債の利回りは現在-0.326%となっています。

物価連動国債はインフレ率が上昇した分だけ元本が増加する仕組みです。

よって、最終利回りはマイナスですが、今後インフレ率が上昇すればプラスになります。

現在の条件を言い換えると、今後10年間に渡り0.406%のインフレ率で推移した場合、通常の10年国債と同様の0.08%の利回りとなることになります。

インフレ率が上振れればさらにプラスになりますし、逆に0.406%を下回るインフレ率の場合、利回りがマイナスになる場合もあります。

物価連動国債というとイメージで「利息がもらえてインフレになればさらに儲かる」と感じるようですが、そんなおいしい話はありません。

通常の10年国債を購入する場合より期待インフレ率の分だけもともと利回りが低くなっています。

上記の式を入れ替えると下記のようになります。

  • 10年物価連動国債利回り=10年国債利回りーブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
  • -0.326%=0.08%-0.406%

物価連動国債は個人にも解禁される予定でしたが、一旦延期されました。

仕組みが勘違いされやすいので、もう少し世の中に理解が進んでからのほうが良いと感じます。

ただし、公募投信ではいくつか商品がありますので投信経由であれば購入は可能です。

購入するタイミングとしては、当たり前ですがブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)が低い局面です。

もちろん将来的にインフレ率が上昇するという見通しがあることが前提ですが。。。。

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